「31歳ガン漂流」

本棚にあって読んでなかったのを読んでみた。

31歳ガン漂流

31歳ガン漂流

ライターの著者がガン告知をされ、その闘病中のブログが書籍化された単行本。ブログシステムとか流行る前から書いてる方で、アップされた日記はまだネット上でも読める。

上記ページを見ても分かるように奥山貴宏氏は2005年に亡くなられている。しかし本書は2003年の段階までしか載っていない。その段階で出版されており、後日、日記のつづきが出版されている。それも本棚にあるので、続けて読む予定。

闘病日記ではなく

この日記のスタンスは闘病日記ではない、と気づくのにそれほど時間はかからなかった。
彼の日記の中にたまたま闘病生活が絡んでいて、たまたま生活の場が病院になっている、ということは、悲惨な表現や葛藤が書かれていないことからも分かる。
それを明らかに書いている2003年1月28日の文章を引用してみる。

怒り、絶望、恐怖、悲しみ、そういう要素は全部オレ一人だけで楽しむためにとっておく。勿体なくて、誰とも分かち合いたくない。読者には悪いけど、全部オレ一人だけの領域。

http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=109599&log=20030128

ライターという職業故の言葉かもしれない。
とても重い。

有限の命

割と楽観的に考えているように言葉を選んでいるようだが、それも完璧にそんなことが出来るわけもなく、ある日の日記からその様子が垣間見られる。
自分の命の残りを宣告されているのだから当たり前かもしれないが。しかし、この分を読むとつらくなる。
2003年2月15日の一文である。

とりあえず、年金を払うのをやめよう。

http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=109599&log=20030215

まだまだ弱い自分のような人間には、そのことに気づいたときのショックを想像することすら恐怖だ。

「思考の整理学」

ヨドバシAkiba内にある有隣堂で平積みされており、帯の文句に惹かれて購入しました。

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

帯にはこう書かれていました。「”もっと若い時に読んでいれば…”そう思わずにはいられませんでした。 さわや書店 松本大介さん 1986年発売以来の超ロングセラー」かなり強気というか、期待させるので、一体その実態はどれだけのものか?と購入したわけです。後から考えたらこの帯の言葉は秀逸ですね。「若い時に読む」と決められることで、「また今度買おう」とは思わせない強さがある。

読みやすい

「考える」ということに関して書かれているのだが、6ページ位のエッセイスタイルで構成されており、中身の濃さの割にはとても読みやすい。
20年以上前に出版された書籍なのだが、全く古くなっていない内容はとても参考になる。

思考に対するヒントが満載

本書は著者があとがきで「ハウツウものにならないようにしたつもりである」と書いているように、読んだからといってすぐに何かテクニックが身につく類の書籍ではない。しかし、考えるときにどうしたら思考を深めることが出来るのか?ということがたくさん載っている。
私が今までいろいろ考えているときにいくつか思っていたことなども書かれていたりして、そういうことを改めて知ることができたりして、とても良い本である。
思考するために何か良いアドバイスはないか?というときに本書を読むと得られるものは多いでしょう。そういう自分で何かを得ようと読むべき本である。

外山氏の著書

結構面白かったので、機会があれば別の本も読んでみたいと思っている。以下にメモしておきます。

大人の日本語―30歳からの「絶対語感」の磨き方

大人の日本語―30歳からの「絶対語感」の磨き方

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫)

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫)

「こちら救命センター」

読む文庫本が無くなったので、BOOKOFFにて100円で購入。

こちら救命センター 病棟こぼれ話 (集英社文庫)

こちら救命センター 病棟こぼれ話 (集英社文庫)

救命救急の医者が雑誌に書いていたコラムをまとめた本なので、読みやすい。
ただ、最初の方はやたら偉そうでその文体とかが鼻につく。最初に載せられていた雑誌が看護師さん向けの雑誌だからか、もしくは、著者の人柄なのかもしれないが、それを推してもなんだか読み進めたくなくなる雰囲気のある文体だった。
扉裏の著者近影の写真がいやーな漢字だからかもしれない。写真は重要ですね。
でも、最後の方のコラムでは面白い話というか、いろいろ考えさせられる内容が多く、それなりに元は取れた感じ。
ただ、続編も出ているらしいのだが、それは読まないだろう。

「スティーブ・ジョブズ」

最近、衝動的に買って読んだ本。
スティーブ・ジョブズという人を誠実に真っ正面から書いた本「スティーブ・ジョブズ 神の交渉力」。

iPodが大ヒットし、Macの評判も高まってきた昨今、大体の本はやたら肯定的になりがちなジョブズをその最初の頃から彼の人柄ややり方をそのまま書いており、その書き方がとても評価できる。本書を読んで、彼を好きになるとか嫌いになるとかは無く、ただ彼のことがよく分かるのだ。
分かった上で思ったことは、「うーん、俺は彼の近くにはいられないな」というのが正直な感想。
以前いた会社の社長とかなりかぶる性格であることも間違いない。
読んで損はない。

「ケータイ世界の子どもたち」

8月に読んだ新書。
子どもとケータイ、ただ切り離すだけではなにも問題は解決しない、と思ってたときにamazonでクリックして購入しました。

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)

結局なにが問題なのか?それを知ることがまず必要、ということで、いろいろなサイトを紹介しています。
自分は30代なのですが、ネットの世界ってPCで全てアクセスできる、みたいなことを思い込んでいる自分に気づいたのがちょっとした発見でした。
また、PCからアクセスする世界と、ケータイからアクセスする世界は結構違う文化があり、それは大人と子どもの文化、とも違うようで、これから先、いろいろなサービスが出てくるとますます大きな剥離となっていくのではないでしょうか。
アクセス制限とか「本当に必要なの?」と懐疑的でしたが、本書を読み終わると、それなりに必要かも、と思った。
親がアクセス制限リストを編集でき、それを知り合いの親とか有識者と共有できるような仕組みがあってもいいかもしれない。

「ユビキタス・コンピュータ革命」

坂村氏が、東大教授で、ユビキタスコンピュータとか、TRONの人だということは知っています。でも、著書を読んだことがなかったので、100円で見つけたこの新書を初めて読んでみることにしました。

バズワードなのか?

ユビキタスコンピューティング」って、実際に普及するか?とか、考えたときに、やっぱり何か違うんじゃないかな−?と思っている。「ウェアラブルコンピュータ」とかと同じ印象。
本書を読むまえに、その印象が変わるかな?と思っていたけど、読了後も変わりませんでした。結局、概念レベルのことで語ることも結構なんだけど、普及しないことにはどうしようもないことがある。
ユビキタスコンピューティングはその最たるモノで、普及しないユビキタスコンピューティングはユビキタスコンピューティングではないのだから、ジレンマに陥っているようだ。

ケータイが無い世界

こういう思想とかって時代に左右されないのがいいところでもあるのだが、実際にサービスに落とすためには時代を読み切る必要があると思う。
今で言えば、ケータイは外せないわけだが、本書にはそれを踏まえた思考が一切無い。無線と赤外線をつけたバッジをつけろだの、そういうことはケータイと一緒になれば何とかなるはずじゃないのだろうか?
ケータイという「機械」を一人が一つずつ持っているような社会、それを拡張すべきである。
最近、もっともユビキタスだと思ったアプリがiPhone用に発売された。「OmniFocus for iPhone」というアプリで、GPSと連動させたTODOが作れるのだ。GPS自動起動出来ないのが残念だが、これがもしGPSから自動で位置を検出しユーザにTODOリストを知らせることができたなら、かなり未来な感じがすると思うのだ。
GPSとケータイ、これらをうまく組み合わせたり、発展させたりすることでユビキタス社会が出来るように思えるのでした。

「キヤノンとカネボウ」

BOOKOFFでタイトルだけで購入した本書、本当は100円のつもりでレジに持って行ったのですが、350円となっていて、今更引き返せない、とそのまま購入してしまったのです。

キヤノンとカネボウ (新潮新書)

キヤノンとカネボウ (新潮新書)

ビジネス論はありません

最後まで読んで思ったことは、著者のただの半生を書いただけの本、という感じがします。そして、その社員からの目線で社風を紹介、という感じで、定年退職したおじいちゃんが、子や孫にどういう会社で働いていたかを話す、そういう内容ばかり。
カネボウキヤノンがどういう会社なのか?ということは分かりますが、全体的にあまり面白くなかったです。

顔の面積

唯一面白かったのは、化粧品市場のことを説明した次の文章。

化粧品市場は、わずかな「顔の面積」でメーカー出荷額2兆円の売上を計上するしたたかな業界です。

市場の大きさのようなものを、ターゲットとなるものの面積みたいなべつの単位に置き換えることは新しい視点が見えてきていいですね。
ちなみに深さは2ミリらしいので、日本市場は最大で、日本の女性の人口×顔の平均面積×2mmという体積の奪い合い、ということになります。
他の業界ではどういう表現ができるだろうか。
TVゲームで言うと、テレビの数×(24時間−1日のテレビ番組放映時間)の奪い合い、か?それとも、(日本の人口×目を開けている時間)の奪い合いか?

何かを得たような

新書、という媒体でなければあり得ない内容だったように思います。
ちょっとがっかり。