「父親の力 母親の力」

100円の本

この本もBOOKOFFで100円コーナーで見つけて購入しました。

父親の力 母親の力―「イエ」を出て「家」に帰る (講談社+α新書)

父親の力 母親の力―「イエ」を出て「家」に帰る (講談社+α新書)

最近BOOKOFFなどの古本屋の100円コーナーで本を2冊くらいまとめて買うことがなんだかよい感じなので、これを「100円コーナーで本を買う」シリーズと名付け、100円のカテゴリもつけておこう。100円の本からたくさんのことを学べたら安いなー。

河合隼雄という人

この本の著者、河合隼雄という人は名前だけは知っていたのですが、彼の著作を読んだことはあまりない。去年読んだ「ゲドを読む。」という小冊子に彼が昔書いた文章が載せられていてそれを読んだことがある程度です。

ざっくりとWikipediaで調べておくと、こんな感じらしい。

  • 専門は分析心理学、臨床心理学の教育学博士
  • 分析心理学(ユング心理学)を日本に紹介した心理学者
  • 箱庭療法の日本での紹介者
  • 文化庁長官(2002年〜2006年)
  • 京大名誉教授
  • 1928年生まれ、2007年亡くなられた。

人間のこころも科学で分析できるのではないのか?ということを日本で調べ始めた先駆けの人のようです。
本書でもユングの言葉を引用している箇所がありました。

ユング(一八七五〜一九六一)がこんなことを言っています。
「旅行に出て、行く先のことがわからないときには、とても不安になる。われわれの人生の旅において、終着駅がどうなっているかはわからないのだから、人間が不安になるのは当然だろう」
(p.203)

話はずれるのですが、ユングって意外に最近の人物なのですね!たかだか100年前の人で、つい40年前まで生きていたのか。

父親

この本を手にしたきっかけは、もちろん、最近自分が父親になったから、ということが大きい。結構いろいろ考えるようになった。独身の時にもいろいろ考えていたとは思うのだが、そのときには考えもしなかったことなども考え、また、いろいろと思うことが増えてきた。そういうたくさんの問題などについて、世の中の人の意見をもっと聞いておくべきだと思い、この本を手にしたのでした。

日本の西洋化

日本に西洋文化が入って変わってきているが、それでもすべてが西洋化されているわけではないことがいろいろあり、そこにズレが発生してきているから発生してきている問題がある、ということが、結構書かれている。
日本が古来から持つ良さをいかしていた生活システムが西洋化されているのに、それに古来からの考え方を引きずっていては崩壊してしまう、ということだ。
だからどうしたらいいのか。その問いに対して、河合氏は手っ取り早い解決策を出さない。むしろそういう手っ取り早い解決策は悪だ、と言い切っている。

現在は、家族というシステムにとっても大きな転換期ですから、これまでに想像もできなかったいろいろな問題がいちどきに起こってきます。それは、なにか新しいことがはじまるチャンスでもあるわけですが、そのためにも、私たちは考え方をそうとうに改造していかなければならないのではないでしょうか。
こういうときにもっとも悪いのは、みんなが手っ取り早い解決策を探そうとすることです。マイナスをゼロにするくらいなら、わりと手っ取り早くできるかもしれませんが、それでは、またすぐにマイナスが起こってきます。
(p.236 手っ取り早い解決策はもっとも悪い)

じっくりと、個別の事例に向き合って対応していくしかない、と、そういうことだ。

子どもは思い通りにならない

本書を読んでいると、子どもを巡る様々な問題に対して、何か単純に事を済ませようとしてきている自分に気づかされたり、収穫の多い本でした。これから何度か再読することになるかもしれません。
最後にちょっと考えさせられた文章を引用して終わります。

親は「これだけ一生懸命育てたのに」とよく言いますが、一生懸命育てたらいい子が出来ると決まっているわけでもありませんし、いい子が必ずしも幸福とはかぎりません。仕事を一生懸命やればお金が入ってきますが、子どもはそうはいきません。だからこそ、家族はおもしろいと思うのですが、なかなか葛藤があることを面白いとは思えない人が多いようです。むしろ、ほとんどの人が、そういうのがないのがいい家庭だと錯覚しています。
(p.186)