「リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと」

気になっていた割にはなかなか読んでなかった本書を読んでみました。
200ページで文字も大きめ、というのもあるのですが、文体、内容がとても読みやすく出来ているおかげでさくっと読めました。これも林田氏の心くばりだと思います。

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと

リッツ・カールトンのサービスのコアを語る本書の読みやすさというのは、まず林田氏の経歴が重要になっていると気づかされた。

本書を読む前には、おそらく海外のリッツ・カールトンで働いていた日本人の話、とか思っていたのですが、それは全く違うのです。18歳から50歳まで太閤園というところで働いている。

本書では以下のように紹介されています。

太閤園という「大阪の迎賓館」とも評される、宴会場や結婚式場を備えた老舗のガーデンレストラン
(「はじめに」より)

トップクラスのサービスを提供している場ではあるのですがホテルではない。つまり、彼はリッツ・カールトンに入る前にホテルでの経験は全く無かったのです。
1996年、大阪にオープン準備を始めたリッツ・カールトンに入ることに決め、働きはじめ、そこで今までとの経験との差からいろいろ学ぶことになった、という話がベースなので、ありきたりなどこでも言われているような基本的マナーとかは割愛されている。
なるべく高度なサービスを提供したいと考えている人は是非読んでいただきたい。

クレド

本書で多くのことは語られていない。
ただ、リッツ・カールトンで働く全ての人が他のホテルでは感じられないサービス精神に満ちている、ということをどうやって実現しているのか?という話である。
その基本が「クレド(credo)」と呼ばれるカードである、という。
全ての社員が渡されるカードで、リッツ・カールトンで働く上で基本となる理念が書かれている。
実際林田氏も最初は甘く見ていたほどの、抽象度の高い理念である。
問題はこの理念をどうやって具体的な行動に移すのか、それをすべての社員が考えながら行動しているので、すばらしいサービスが出来る、ということなのである。
簡単に言うと次のようなことである。
具体的な手順を全ての社員が考える、そのための規範となるクレドを最上位(社長よりも最上位)に置く。
この考え方は他の業種でも通用するような気がする。

気くばりと心くばり

日本語の話であるが、最初のほうに書いてあり、いいなーと思ったのが次の言葉。

「心くばり」を辞書で引くと「相手の心情を十分に考慮したり、予測される事態に対し万全の対処をすること」とあります。
私は、これぞまさにサービスの原点であると思います。同時に世の中の紳士・淑女と呼ばれる人が備えている気質のようなものだと思います。
一方の気くばりは「まちがいや失敗のないように細かいところまで注意を行き届かせること」とあります。
これは最低限度やるべきことです。

肝に銘じたい。