「情報のさばき方」

別の小説などと並行して読んでいた本を読み終えた。

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント (朝日新書)

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント (朝日新書)

朝日新聞編集局長が書いた内容、ということで、読む前に「世の中にたくさんある情報から、いかに重要なものをピックアップするのか?」という内容を想像していた。しかし、本書はそのようなライフハック的なものではない。
後から気づいたのだが、カバーの袖に書かれていた次の文章が紹介には適切。

情報を扱う場面を、「つかむ=収集」「よむ=分析・加工」「伝える=発信」の三つに切り分け、豊富な事例をもとにそれぞれのポイントを解説し、対処法へのヒントを紹介する。

甘くない

ただ、一つ付け加えておきたいのは、この本は新聞編集局長が書いたものであり、全ての内容は新聞制作に基づいているということ。最近流行の単純なライフハック集的に読もうとすると何もつかめない。
しかし、紹介されている事例を掘り下げて、応用する力があるならば、本書は何かをもたらしてくれると思う。何といっても、著者の文章力がスーパークラスなので、あらゆる事例がとても納得できる形で読めるのだ。

「情報力」という言葉

本書を読んでいるあいだ、常に何かザラッとした感じを抱いていた。それは嫌悪感を持つざらつきでは無く、しっかりと握るためのグリップのような感覚。もしくは文章のテクスチャを感じたといえばいいのだろうか。
このエントリで私は「ライフハック的なもの」という言葉をネガティブキーワードとして使っているのだが、それらからは感じられない感覚が本書からは感じられたのだ。
それを何なのか考えたくて、いつもは読み終えたその日に書いていたこの読後感想blogを、本書に限っては読み終えたあと数日間ボンヤリと考えていた。
そして現在このblogを書きながら感じていることは、次のようになる。
ウェブ上で騒がれている「ライフハック的なもの」で扱う情報というのは、既に情報化されたものである、ということ。つまり、そこでいう情報処理、というのは、「いかにして効率よく箱に積み木を詰め込むのか?」ということと感じられる。すごいサラサラとしていて手触りがない。もちろんそれはそれでアリだし重要だとは思うのだが、本書で言う「情報力」というのはちょっと違うところにある。
この積み木の例に対応させるならば「森の中にあるたくさんの木から、どのようにして積み木にすべき木を選び出し、それを出荷すべきなのか?」となる。
だから、本書には、森の中から積み木にすべき木の選ぶときに考えるべきこと、木を切るときに考えるべきこと、などが書かれているのだ。そしてたまに事例として木の運び方などが外岡氏の個人的な経験としてヒント的に書かれている。

情報化の必要性

森の中から積み木を作り出す、いわば「情報化」が普通の人に必要かどうかは自分には分からないが、しかし、やっぱり必要に思える。そういう何かを変化させる力がないと、仕事にしても、ただ情報を仕分けるルーターのようなことしか出来ないのではないだろうか。

それでも残る何か

うーん、これでもまだ十分に言い表せていない気がする。
もっと大事な何かがこのザラつきにはあると思う。手放しちゃいけない。そんな感じ。
ゆっくり心の中に沈めておこう。
いつか何かにつながるときまで。