「ウェブ時代をゆく」

先日ちょっとした空き時間が出来て本屋をぶらりとしたときに購入した。以前読んだ「ウェブ進化論」の続編とも言うべき本書は、なんとなく読む気がしなかったのだが、無理にでも目は通しておこうかと思い、変な義務感から買って読んだ。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

そうか、「ウェブ進化論」が発売されてからもうすぐ2年になるのか。意外に早い。

こちらは人生論

ウェブ進化論」はウェブ2.0というキーワードがむやみやたらと使われ始めた頃の話で、ウェブを中心として何かしら変革が起きている、という一般人の漠然とした感覚を、「ロングテール」とか「あちら側」とか「グーグル」とかのキーワードで、こちら側に住んでいる人に説明した本。専門家による技術世界の概況説明、という立ち位置。
本書は前作で説明した知識が一般人にも浸透してきたところで、「ではどうやってその変革に適応すべきか」という視点で、梅田氏の考え方を持ち出してきた、いわばウェブ時代の人生論である。こうして振り返ってみると、このタイトルはしっくりくる。

新しい生き方

ウェブという「もう一つの地球」が出来つつあり、そこでも経済が回り始めたおかげで、あちら側に軸足を置いて生活をすることが可能になりつつある。梅田氏は、その具体例としてオープンソース界隈の有名人をひっぱりつつ、また自分の半生も紹介しつつ、新しい生き方を説明している。
つまり「ウェブというもう一つの地球があれば、今まではとても生きてこられなかったような生き方でもこれからはアリの場合があるよ。」ということ。「ただそれは厳しい道かもしれないけどね」と注釈をつけつつ。

けものみち

もう一つ本書の中核をなしているキーワードが羽生善治氏の「高速道路とけものみち」という言葉。
ウェブで様々な知識がオープンになっているおかげで、今なら誰でも興味さえあればある程度まではあっという間に身につけることが可能になってきた。ただ、その高速道路はあるところから渋滞になっており、その先は横にあるけものみちに降りるかどうするか、ということが問題になる。という話。
今までもやもやとは分かっていた感覚が言語化されたことですっきりした。とても分かりやすいいい表現。

自分の場合

結局本書ではこのように人生をどうすべきか、という話になっている。
自分の人生観が固まっている人には面白くない内容かもしれないが、たまたま自分の場合も最近はいろいろと考えることがあり、それともあわせてタイムリーにいい思考材料となってくれた。
高速道路、という表現は、誰でもスイスイだよ、という意味のほかに、ここで止まっているやつはバカだ、とも受け取れるわけで、ガツガツいかなきゃ!とプレッシャーとも受け取れる。
高速道路と、けものみち。他に道は無いのか?と探すこと自体はけものみちなのかもしれないが。