「R.P.G.」

これは以前読んだことがあったはずだけど、読後感だけ覚えていて、ストーリーを思い出せないから、もう一度読んでみた。

R.P.G. (集英社文庫)

R.P.G. (集英社文庫)

基本的に取調室だけでストーリーが進んでいくシチュエーション固定のミステリー。
宮部みゆきの作品を2作続けて読んだわけだが、やはり、とにかく、ストーリー展開が秀逸。タイトルや読者の「先入観」「理解」をほぼ完璧に把握している。それゆえに気持ちいいタイミングでストーリーを転がしてくれる。つまりそれは、粘るところでは粘る演出を仕掛けてくる、ということなのだ。
序盤から中盤ではペタリペタリと気になる描写を重ねていく。そして、十分粘ったストーリーをペロリペロリとはがされていく。中盤あたりでペロリと剥がしつつもペタリと別の複線をはるところがまたすばらしい。そして最後にはきれいに全て剥がされている。これがファンの多い秘訣なんだろう。
登場人物の名前を覚えやすいのも、特徴かと思う。キャラ作りとか特に意識されているのかもしれないし、自分の記憶的に区別しやすい名前だったのかもしれないのだが、小説を読んでいて分からなくなるとストレスに感じてしまうので、その点においては助かった。
最後のあとがきまで読んで分かったのですが、この話に出てくる武上刑事と石津刑事は他の宮部作品に出てきている。それらの作品(「模倣犯」と「クロスファイア」)を読んだことがなかったのですが、それなりに読めた。でも序盤、なんか妙に感情的というか無駄な描写が多いな、という印象はあったのだが、それはそれらの作品を読んでいる読者なら楽しめる描写なのだろう。
そして、この二人の刑事が出てくるということから、この作品自体も「R.P.G.」なのか、という二重、三重どころか四重構成の「R.P.G.」。
そうか。「R.P.G.」というタイトルをつけることで、普通の小説では使えないテクニックが堂々と使えるわけか。なるほど。
秀作!

関連作品:

クロスファイア(上) (光文社文庫)

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模倣犯1 (新潮文庫)

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