「手紙」

「手紙」、家の本棚にあったのですが、借り物だということで、積読状態の本をすっ飛ばして先に読むことにしました。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

第129回直木賞候補となった作品だけあって、かなり面白く、一気に読めた。
帯には、山田孝之玉山鉄二沢尻エリカの3人がキャストとして2006年に映画化された、印刷されており、彼らの写真も載っている。通常写真があると先入観を持ってしまい、自分の中のキャラクタとギャップがあると物語没入の妨げにもなりかねないのだが、このキャストがなかなか良い選択だと思えたため、スムースに話に入れた。

主人公の兄が「強盗殺人」という罪を犯してしまい、弟は「強盗殺人犯の弟」という運命のもと生きていかなければいけなくなった。その弟の話。
正直、とても読んでいてつらいのだが、話のテンポがよく、次々とページを繰ることが出来た。少々、読みやすすぎなのでは?と思うくらいだ。
終盤の第5章でいくつかの出来事が起きる。
それは4章までの丁寧な心理描写があるからこそ映える言葉なのだが、様々な逆境に耐えて生きていく主人公に、それを当たり前だと言い放つ人物が現れる。まっすぐ歩き始める方法を見つけかけていた主人公には強烈な言葉だ。
何がなんだか分からなくなる。
しかし、違う立場を垣間見ることが出来、そこではじめて理解できるようになる。
つらい。
罪とはこういうことか。
罰とはこういうことか。
そういうキーワードを考えていると、ドストエフスキーの「罪と罰」は読んだこと無いけど、ちょっと読んでみたくなった。
井上夢人のあとがきに書いているオノ・ヨーコのエピソードがとても適切で、この物語の厚さを保障してくれている。
手紙 スタンダード版 [DVD]

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東野圭吾、純粋な推理物よりも、こういう物語の方がいいね。彼の作品で推理物しか読んでいない人には、これをオススメします。