「「みんなの意見」は案外正しい」

Amazonで購入していた「「みんなの意見」は案外正しい」を読み終えた。

「みんなの意見」は案外正しい

「みんなの意見」は案外正しい

タイトルから想像してしまうようなヌルい内容ではなく、結構学術的、実践的な内容が多くとても面白かった。
学問でいったら「行動学」「組織行動学」というところなのか。実際そのあたりの学問についてまったく知識がないのでなんともいえないが、語感的に・・。
読み終えて、この邦題は確かにセンセーショナルでキャッチーなのだが、やっぱりどうも納得いかない。原題は「THE WISDOM OF CROWDS」なのだが、これもやっぱり微妙。
この本の内容はもっと一般論にまで及んでいるので、やっぱり行動学ぐらいの言葉は欲しい。ま、それじゃ売れないだろうけど・・。
で、このタイトルの「「みんなの意見」は案外正しい」ですが、そのままの意味を主張しているわけではなく、要約すると『「ある条件」を満たせば「みんなの意見」が「最も賢い個人の意見」より正しくなる』ということを主張している。
まず、個人の意見より、集団の意見が正しくなる、ということが結構面白く、確かにショッキングなこととして受け止められる。「ホントかよ。」という気持ちを持った時点で、すでにこの本にフックされてしまう。
で、その「ある条件」というのは、「多様性」「独立性」「分散性」「集約性」の4つだ。(p.28)
確かにこれだけ(多くの条件を)満たせば正しくなるのだろう、と思ってしまうけど、でも、民主主義社会では集団で物事を決めることが多いわけで、つまりそのときになるべく条件を満たすように心がけるべきだ、と思うわけです。
それぞれの条件の必要性と考察についても章を割いて述べられているので、著者の考え方がとてもよく分かり、納得できる。
企業などにおける人のマネジメントとか、世の中の群集の動向を知りたいということで、行動学というものに興味があれば読んだほうがいいと思う。
とはいえ、前述したとおり自分はいわゆる行動学を知ってるわけではないので、他の本との比較はできません。
とりあえず、メインの話以外にも、面白いトピックがあったのでメモしておく。
「情報カスケード」(p.70) …「情報不足の状態で次から次へと判断が積み重なる」こと。これって、あっという間に人のblogを引用というかコピペされていく、今の何とか2.0とか呼ばれている世界で起きていることだと思う。
シェリングポイント」(p.120) …シェリングが提唱している「人々の予測が収斂する、ランドマークのような目立つ焦点」のこと。ある意味、アフォーダンスの存在とも一致する考え方。ゲームとかインターフェイスデザインとかではこれを逆手にとることが重要だったりすると思う。
最後通牒ゲーム」(p.127) …「二人一組。二人の間で分け合う10ドルが与えられる。配分者が分配の比率を決める。もう一人(受益者)がのるかそるかの提案をする。提案を受け入れた場合は二人とも現金をもらえる。拒否されたらどちらも1セントももらえない。」このゲームの結果から「人々は報酬が公平であるかに関心がある」ことが導かれるのが面白い。
「公平な取引から生じる長期的な利益のほうが目先の取引から生じる短期的利益よりも大きい、と人々が思えるときに資本主義は健全だと言える。」(p.139) …とても納得できる一文。ライブドアの例をひくまでもない。
「公共財ゲーム」(p.152) …「四人1グループ。各人メダル20枚渡され、ゲーム中に4回まわってくる自分の番に、公共のつぼにメダルを入れるか、手元に残すか選択。メダルを1枚投資すると、0.4枚分しか戻ってこないが、他の人全員も0.4枚分ずつもらえる。つまり1枚投資するとグループ全体として1.6枚のリターンがあることになる」…フリーライダーが生まれ、周りの状況に応じて、フリーライダーになる人が出たりする。
「「民主化=終わりのない議論」ではなく、「民主化=意思決定権を広く分散化させること」」(p.220) …とても重要な考え方だと思う。最近ちょっと疑問に思っていたことがすっきりした。