「パックマンのゲーム学入門」

ナムコ岩谷徹氏が書いた「パックマンのゲーム学入門」を読みおえた。

パックマンのゲーム学入門

パックマンのゲーム学入門

大きく分けて3つに書き分けられている。
時系列にそって書かれた岩谷氏の自伝的な部分がCHAPTER 1。ここで岩谷氏の歴史を知り、そのあとに出てくるキーワードや、彼の言葉の裏を理解できるようになる。
次にゲーム業界のことをディープに書いたゲーム学部分がCHAPTER 2〜CHAPTER 3。ゲーム学と名付けられていることから分かるように、彼のゲーム制作に関するノウハウから哲学的な所まで話が及ぶ。ゲームを作る人は読んでおくべき内容も詰まっている。
おまけ的な対談部分がCHAPTER 4〜CHAPTER 8。各章で様々なゲーム業界の人と対談が載せられている。

ゲーム制作に携わる(最近携わってないけど)人間としてやっぱり2つ目の部分が示唆に富んでいて楽しめたし、心に深く刺さる言葉が多かったので、少し引用しあとで読み返すためのメモとしておく。
p.86『ものづくりの観点で最も重要だと思っている考え方があります。それは「FUN FIRST」=楽しいことが第一。』
もう、絶対そうだよね!とテンションが上がり、また、それでいいんだよね!?と確認したくなる。そういうモノづくりをしたいけど、なかなかそういうことって社会に組み込まれてしまうと、見えなくなりがちで、何やってるんだ?と分からなくなることが多い。そこにこの言葉があれば、大きく壁に貼っておきたい気分です。
p.101『セルフゲームコントロールシステム』
難易度設定の話から出てきた言葉で、ユーザーの入力からユーザーのゲームの技術を推し量り、動的にゲームの難易度を設定するというもの。岩谷氏は当たり前のように書いているが、そういうのを取り入れているとかあまり効いたことが無い。なんか、その時点で自分がヤバいモノづくりをしているんだと気づかされた。そりゃ、ダメだわ、自分。
p.104『動詞でゲームをつくってみる』
パックマンは「たべる」、リブルラブルは「囲む」。なるほど、動詞はアクションなのだから、新しいゲーム性のヒントになるはずだ。
p.112 ロジェ・カイヨワの著書「遊びと人間」による遊びの四分類。

  1. アゴーン」…ルールの定まった理想の条件下で競う遊びのこと。
  2. 「アレア」…さいころを使う遊びで、相手に勝つことより運に勝つことを楽しむ遊び。カジノはこれとアゴーンとの組み合わせ。
  3. 「ミミクリー」…虚構の世界でその世界の人間となりきるモノマネ遊びやゴッコ遊び。RPGとか。
  4. 「イリンクス」…知覚の安定を崩し、意識をパニック状態にさせる遊びのこと。ブランコやジェットコースターなど。

これらは重要な割にあまり知られていないように思う。少なくとも自分は知らなかったから、やっぱり原典を読んでおくべきかもしれない。

遊びと人間 (講談社学術文庫)

遊びと人間 (講談社学術文庫)

こういう知識や造詣の深さとか、やっぱりずっと考え続けている人の思想は深いものがあるので、一読しただけで分かった気になれないし、何度か読み返すべき本になりそうだ。