「考える脳 考えるコンピュータ」

octi2006-08-09

ジェフ・ホーキンスの「考える脳 考えるコンピュータ」を読んだ。
ジェフ・ホーキンスとは、パーム(PDAのあれ)を開発したりした人。
とあるblogで薦められていて、なんとなく購入していたのですが、正直、そこまで期待してなかった、というか、何が書かれているかも理解していないまま購入した。
読んで、その鋭い洞察とかいろいろなことにショックを受けた。

考える脳 考えるコンピューター

考える脳 考えるコンピューター

まず、前書きで、彼が脳科学というか脳の仕組みについてとてもまじめに考えていることを知る。
ただ思っていることを書いてるのではなく、各種論文に目を通し、考察し、真剣に『研究』をしているのだ。
そして本書はその論文とも言える出来になっている。
ちなみに、和訳の本書では参考文献などは省略されているのだが、ウェブで補足されているので十分。→http://www.randomhouse-kodansha.co.jp/books/details.php?id=74
本書では、脳のしくみへの興味、脳の各種研究の問題点、提案、考察、今後、という構成。まさに典型的な論文の構成です。
「第1章 人工知能」、チューリングテストをはじめとする概要を語る導入部分。
「第2章 ニューラルネットワーク」、よく出来ていそうな雰囲気のあるニューラルネットワークの仕組みについて真っ向正面から問題点を挙げている。
これはなんとなく気づいてたことなんだけど、改めて言われるとやっぱりおかしいよな、と思う。この章でつかみはOK!
「第3章 人間の脳」、マウントキャッスルの発見、をベースに大きな仕組みを考え始める流れを説明。
大脳新皮質への入力は全て等価である』という言葉にドキドキしてくる。
「第4章 記憶」、100ステップの法則、で脳は処理速度は決して高性能ではないことを説明。
コンピュータ以上の処理を行うから、処理速度は速いと思っていた自分にはショックな内容。
「第5章 知能の新しい定義」、『予測』ベースの仕組みを説明。
なんとなんと、そういうことなのか、といちいち納得してしまう。
「第6章 新皮質の実際の働き」、本書の中核の章でもっとも長く、ちょっと難しい。
しかし、これがこの本の誠実さをあらわしていると言っていい。じっくり読むべき章。
この章までで基本的な説明、提案は終わり。
「第7章 意識と創造性」、本書で提案した仕組みをベースに、一般的に問われる疑問への回答。
意識とは?創造性とは?それを説明。
「第8章 知能の未来」、今後の課題、一般への啓蒙文章の章。ジェフ・ホーキンスの志の大きさが分かる。
ざっとこんな感じ。
一番メインの話題はやっぱり118ページにあるこの言葉だろう。
『脳の知能とは記憶による予測の枠組みである』
『予測』というところが中心に来るのが面白い。
何かがあって、予測、なのではなくて、全てが予測によって成り立っている、ということなのだ。
この1冊から様々な影響を受けました。
面白かった。
で、何か作りたくなったけど、とりあえずは、ダメダメなニューラルネットワークでも組み立てて、それをいじってダメさを体感してからかな。