「33歳ガン漂流 LAST EXIT」

奥山貴宏氏のガン漂流シリーズ3冊目、2日で一気に読み終えてしまった。

33歳ガン漂流ラスト・イグジット

33歳ガン漂流ラスト・イグジット

奥山氏は2005年4月17日に亡くなられました。
ということで、前2作とは違い、この本は奥山氏の意志とは別に、遺族と出版社の意志で出版されている。しかしながら奥山氏が書いていたblogとウェブの日記と、コラムを使っているので、それほど前作と違和感が無く読めました。

死を前にして

一貫して奥山節は基本的に変わらずなのですが、4月に入るとblogが途切れ途切れになり、最期のblogとなる文章はとても弱くなってきていて、胸が詰まる思いになる。今までそういう気持ちを一切表に出していなかった分だけ、最期の弱さに涙腺を刺激される。
本書を読んでいる時点で奥山氏が4月に亡くなることは読者には分かっているわけだが、本人はもちろん分からないハズ(死ぬということは分かっていてっもその日付までは分からない)。死の3ヶ月前になる1月19日にお母さんが家に掃除に来てくれて帰るときの様子に、死を予感している感情が書かれている。

タクシーで家に戻る。サ母が最後まで見送ってくれる。タクシーの中から手を振る。この人に平穏な日々が訪れるのは、オレが灰になった後だということを考えると少しだけ涙が出てきた。

サ母

奥山氏の日記の中では、お母さんのことを「サイボーグ母」、略して「サ母」と書かれているのだが、このお母さんの存在がとても大きいなぁ、とこれまでの日記を読めば誰でも思うだろう。しかし、このサ母に関して、奥山氏の父が書いた本書末の「謝辞」で、ある事実が分かる。実際ミステリー作品であるわけでもないので書いてしまうが、サ母は生みの母ではない、ということなのだ。サ母の献身的なサポートを読んできた者として、驚くべき事実。深く考えさせられます。
そんなサ母が奥山氏の死後、コメントをblogに載せており、それも本書に載っている。
これがとても素晴らしく愛に満ちた文章なので、最後の文章を引用してみたい。

貴宏はたくさんの仕事を残してくれました。サ母はインプットされた任務の遂行を当分続けていかなければならないようです。それが全て完了した時に、悲しみはどっとやってくるのでしょうか。
 サイボーグ母こと、奥山貴宏母より

食欲

ガン漂流シリーズでは奥山氏がいろいろな店に行っていることが書かれている。自分の家とも近いので、書かれていた店の中で行ったことない店とか今度行ってみたいと思い、ピックアップしてみた。

書いているだけでおなかがすいてくる。彼の代わりというわけではないのだが、ある意味命をかけて紹介しているこれらの店、時間を見つけて回ってみたい。

VP

彼の死の3日前に、初めての小説「ヴァニッシング・ポイント」が出版されている。このタイトルは彼の音楽の嗜好からもPRIMAL SCREAMのアルバム名からとったことは明白。本書も本棚にあるので続けて読んでみたいと思います。

ヴァニシングポイント

ヴァニシングポイント