「恐怖」

筒井康隆の「恐怖」を読み終えた。

恐怖 (文春文庫)

恐怖 (文春文庫)

古本屋で手にしたとき、目次を見て、短編集だと思って買ったのだけど、違いました。
短い章立ての長編。
ジャンルは、ミステリー調だけど、サスペンスと言った方が正しいのかな?もちろん筒井テイスト満載のサスペンス。
このシンプルなタイトルが純粋に正しいと思える作品で、とても面白かった。
若干ネタバレだけど、主人公が半狂乱状態に陥っていく様子がとても丁寧に描かれていて、すごく読みやすく、納得がいく展開。
長編の枚数の余裕がそうさせるのかもしれないけど、筒井作品の中では読みやすい作品だと思う。
且つ、筒井作品の奥まで連れて行ってくれるので、筒井作品を導入としてもいいんじゃないかな。
巻末の中条省平による解説に「メタ・ミステリーの試みである」と書かれているけど、共感できる。
人物の書き分け方とか、キャラクタつくりとかめちゃくちゃうまい。(←うまいって俺が書くと失礼だな・・でも、うまい!)
すばらしいエンターテイメント作品で、同時にすばらしくチャレンジな作品。
章立ての仕組みと、各章のタイトルの付け方が、なんとなくゴルゴ13的だと思ったけど、それはただ似ているだけで、あまり関係ない。これは、個人的な印象。